まだ少し待っててね

20歳の次男が2017年4月に自死しました

荼毘に付す

次男の遺品を指差し、

「こちらの荷物は、どうされますか?」刑事が聞く

「見たくないから全部捨てて下さい」彼氏がそう答え、

驚いた私は「だめーっ」と大きな声を出した


勿論、バルーンタイムや、ビニール袋、チューブなんかは見たくない


でも、リュックもテントも寝袋も、ヘッドライトや

トレッキングポールだって、

全部、次男が大切にしていた登山アイテムだった


きちんと持って帰ってあげないと、次男が可哀想だ

いらない物だけを残し、後は私の車に積んだ


「ドリエルは成分を調べたいので、預からせて下さい」と刑事に言われ、

私は「それは返さずに捨ててしまって下さい」と伝えた


次男は死装束を着せられている

本当に寝ている様にしか見えない


家族5人で次男を霊柩車に運び、彼氏はその車に同乗した

次男を乗せた車を追い、私は運転した


前日まで、あんなに寒かったのに、

嘘のように暑くなり、空は雲がひとつも無かった


「斎場は、ここから近いですから」葬儀屋はそう言ったが、

山を何個か超えて行く斎場は、やはり遠かった


葬儀屋に無宗教だと伝えると、お経は「南無妙法蓮華経」になった


私の親戚は日蓮の寺なので、子供の頃からこのお経を何度も聞いてきた


派遣なのか、このお坊さんはカンペを見ながらお経をあげる

下手だ、これは酷い…と思いながら聞き、

初七日も続けて行った


「お別れをして下さい」


次男の髪を撫でる


ほんの3週間くらい前に、

「床屋に行けなかったから髪を切って~」

と頼まれ、私が切った


頬を撫でる


こんな風に逝かせてしまう為に、育てた訳じゃないのにな…


最後に「ままが行くまで、まだ少し待っててね」と話しかけ、

次男は、お骨になった



大阪に行った時に、食べていたトルコ風アイス

お約束の渡され方をして、次男は喜んでいた


次男と長女

この時はネオン管のグリコの看板だった


長女が出張で行った時に撮ってきた

LEDになっていたらしい

私はネオン管の方が好きだし、

次男と行った場所が、無くなったり変わったりするのは寂しい