まだ少し待っててね

20歳の次男が2017年4月に自死しました

たこ焼屋

次男は高校に入学すると、たこ焼屋でバイトを始めた

面接の為に撮った証明写真は、口から下が途切れてしまったらしい

1回分の写真代しか持ってなかった次男は、そのまま履歴書に貼って提出した

店長は「この子は面白いな」と思って採用してくれた

バイトを始めたばかりの頃は、練習で焼いた“たこ無し焼"を、よく持ち帰って来た


その頃、長女が友人にパソコンを組立てて貰ったのを見た次男は

「給料が入ったら、俺のもお願い」と、姉に頼んだ

パソコンを買うと、今までしなかったゲームを始めた

お金が入る様になったからか、高校の先生や友達が遊んでいるからか、

少しずつ買うようになった

そしてゲームで遊び始めると、小学生の時から趣味だったお菓子を、

全く作らなくなってしまった


クッキー

マドレーヌ

チョコタルト

パウンドケーキ

生チョコ


いつも当たり前の様に食べていたから、写真は殆ど撮っていない

クレープやパフェ、ゼリー、ケーキなど色々と作ってくれて、どれも美味しかった



たこ焼屋の店長は、次男が仕事を覚えた頃に、他店に移動になり、新しい店長が来る事になった

その店長は、だらしなく、次男から話を聞く度にイラッとさせられる男だった

うちの長女と同じ歳で、頻繁に遅刻をしては、高校生の次男に尻拭いをさせていた

普段は裏に隠れ、携帯ゲームで遊び、次男1人に仕事を押し付け、

抜き打ちで上司が様子を見に来た時だけ、仕事をしているフリをしていたらしい

次男は、それをずっと我慢していた



次男が高校1年生の正月、私にお年玉をくれた

「いらないよ」私は断ったが、

「いつもの感謝の気持ちだから、服でも買ってくれよ」と封筒をよこした

中には5万円入っていた



次男が高校3年生の時、たこ焼屋の店長は、

毎日(2年近く)レジ金を盗んでいたのがバレてクビになった

いつも次男は、釣り銭3万円を両替に行かされていたが、

両替しなければいけない金額は5万円だったそうだ

ずっと2万円ずつごまかし、盗み続けていた事に、次男は驚いていた

上司が2年間も気付かなかったのもびっくりだが、

もっと驚いたのは、その店長が高校生でバイトをしていた時にも、

この店のレジ金を盗んでクビになっていた事だ

そして、この件は警察に被害届を出さず、事件にはならなかった


「普通、盗んでクビになった奴なんか、正社員に取らないよね

被害届も出さないし…クソばっかだ」

次男は、たこ焼屋を辞めた


その後、就職するまでは、オープンしたばかりの近所のコンビニでバイトをした

日本語があまり話せない外国人のバイトだらけで、

また次男は、あてにされてしまったが

「オーナーは優しくて、いい人だよ」

と、言っていた


高校を卒業して、エコキュートを取り付ける会社に入社すると、

同学年の男の子が、会社の人達に苛められているのを見て

「助けてあげたいけど、助けてあげられない

その子の辛さを聞いてあげることしかできない」

「大人はクソばっかだ」

そう言っていた


次男は、職場運が悪かった