まだ少し待っててね

20歳の次男が2017年4月に自死しました

次男の夢

幼稚園の友達の将来の夢は、〇〇レンジャーが多かった気がする


皆が発表している中、次男は「消防士になりたい」と言った


幼稚園の“大人になったら?"の質問に、

長女はシンデレラ、長男はポケモンマスター、次女はパン屋さんと答えたのだが、

その中でも、なんとなく1番、将来の夢っぽい気がして嬉しかった


その当時、もしキッザニアがあったなら、すぐに連れて行ってあげただろう…と思う



長男が2歳頃、レゴの赤いバケツを与えたら、よく遊ぶので、青いバケツも買った


それを見ていた次男は、2歳くらいから、長男以上にレゴが好きになった

スパイダーマン、ハリーポッター、

キングダム、恐竜など色々なシリーズを集めた


リュックや弁当箱、時計やマグカップなどの日用品までレゴを選んだ


テレビチャンピオンでレゴをやると、夢中になって見ていたし、

那須や富士急で大きなレゴが展示されていると、目を輝かせていた

嬉しそうな次男を横から見るのが、私は大好きだった


2008年の6月、東京おもちゃショーに、レゴビルダーの直江さんが来ると聞いて、連れて行った


真剣に話を聞いた後、質問コーナーで次男は「どうしたらレゴビルダーになれますか?どうしたらレゴ社で働けますか?」と尋ねた

直江さんは、「今は頑張って勉強して、沢山レゴで遊んで下さい」と答えてくれた


次男は満面の笑みだった



次男は少し変わっていた

私や上の3人や、周りの友達がゲームをしていても、興味がなかった


趣味といえば、レゴ、お菓子づくり、畑仕事…

小学校低学年の時に、野菜を育てたいと言うので、畑を借りてあげた


毎日、学校から帰ると畑に出掛け、

大根や、じゃが芋などの根菜や、

茄子、トマト、ハーブなど色々と育てた


それを食卓に並べると嬉しそうな顔をした


学校の作文には、「家を自分で作って自給自足の生活がしたい」とよく書いていた


長男が2年生の時に、ボーイスカウトに入団し、土日祝日は、うちの家族で付き添い参加をしていた


長男が5年でボーイ隊に上進する時に、次男もカブ隊に入団した


それから次男は、山登りや、キャンプが好きになっていった


高校受験の時には、ワンダーフォーゲル部がある学校に進学するか、

それとも設計を勉強する為に、工業高校の建築科に進むか悩み、

工業高校で建築を学びながら、趣味で山登りをする事を選んだ

たられば

結婚しようと言われていた彼氏も同居をすることになり、一昨年から6人で暮らし始めた


私の両親の具合が悪いので、

実家に帰ろうと考えていたのだが、

子供達も彼氏も反対した


昨年の夏、黙って3日間キャンプに行ってきた次男が、ひょっこり帰宅すると、

まず彼氏は叱ろうとした


少し言いかけた時、長男が「今、言わなくてもいいでしょ」と遮り、

私も「疲れたでしょう、湯船入って早く寝ちゃいなね」と暖かいスープを出した


結局、彼氏は「みんな心配するから、外泊する時には、書置きするとかしていかないとね」とだけ言った


「刑事が死ぬ為に家出したんじゃないか?とか聞くんだよ、そんな訳ないのにね」と笑う私

「うん、けど山で一緒に景色を見ていたお爺さんに、死ぬなよとか言われたんだよね…死ぬ様に見えたのかな」と答えながら、次男は何を考えてたんだろう


~したら良かったのか、

~すれば良かったのか…

考えても仕方ないのは分かっているが、

あの時に叱らなかった事を彼氏は悔いている


私は、次男の会社の上司に「明日になったら本人から連絡させるが、2~3日、会社を休ませて欲しい」と頼み、警察署にも連絡した


翌日、刑事は長男と次男の部屋で、次男に少し注意をすると帰っていった


そして次男は、会社を退職する事に決め、

私と彼氏と一緒に、事務所へ荷物を取りに行った


「少しゆっくりするといいよ」

私は、そう言った


あの時に、もっと突っこんで色々と聞いていれば、こんな事にならなかったのか?


まさかその8ヶ月後に、本当に居なくなるとは考えてなかった私は、“トリックアート展"に誘った


私が次男を撮ったのは、これが最後の写真だった



小さな頃は、写真や動画をよく撮ったのだが、大きくなると減ってくる


もっと撮っていたら良かった…

たらればの後悔ばかりだ


トリックアートの亀に乗っている次男を見ていると、

沖縄旅行でゾウ亀に乗って、餌をあげていた次男を思いだした



動物が大好きな優しい子供だった

1回目の寝坊

捜索願を出す為に、警察署に行くと

生活安全課の刑事2人に質問された


「悩みはありましたか?」

「死にたいと言われた事はありますか?」


考えた事もなかった…

悩みは誰にでもあるだろう

そんな事で死にたいと思うとか、

失踪するなんて事が、

うちで起こるなんて想定してなかった


「え?」


でも考えてみれば、職場の事を

愚痴る事は多かった


昨日のブログに書いた様に、

始発から終電の仕事が多く、終電に間にあわない事も数回あったし、

休日の組み方なんて、ひどかった


出勤させておいて「今日は休みでいいよ」なんていうのは、休日ではないだろうと


でも次男が1番嫌だと言っていたのは、

いじめがある職場ということだった


1年早く入社した次男と同じ年の男の子が、壮絶ないじめにあっていて可哀想なんだと、毎日の様に言っていた


「助けてあげたいけど、助けてあげられない

その子の辛さを聞いてあげることしかできない」


「そんな何もかも変な職場は辞めたらいいのに…」

いつも私は次男に言っていた


「免許があれば、更新時に捕まえる事ができるのですが…事件性がないと警察としては捜せないので家出人として受理しておきます」


警察署で、そう言われた次の日の夜、

「ただいま~」

本当に普通に次男は帰ってきた


「何処に行ってたの?」

「山登りにね」


「携帯が壊れているので、目覚ましを4時半にセットできずに寝坊した

先輩に連絡したかったが、携帯が反応せずアドレス帳が開かない


そうしたら何もかも嫌になって、山に行くことにしたんだ…」


そう次男は言った


私は次男が帰ってきたというだけで安堵して

「疲れたでしょう、湯船入って早く寝ないとね」と言い、

次男の会社の上司に帰宅した事を連絡した