まだ少し待っててね

20歳の次男が2017年4月に自死しました

きっかけ

2日ぶりに帰宅すると、お腹をすかせた猫たちが

私達の足元にまとわりつく


ご飯とお水で満足した猫たちは、食卓に置いた次男のお骨の匂いを嗅いだ


「これは次男くんなんだよ」

「こんなになっちゃって…ねぇ」猫に話しかけた


仏壇は、小さな物を通販で頼んだ

ホームセンターで、お線香と仏壇を置く台を、

花屋で向日葵を買った



次男は何故か、うちの裏玄関が好きで、

いつも裏口から出入りをした

必ず階段を登りながら「ただいま~」と挨拶をして、

リビングに入り、猫たちを撫でる

1週間前までの毎日は、そうだった


お線香をあげながら

「次男くんは本当に、お馬鹿だねぇ」

「今は後悔してるよね?」と話しかけた



その日の夕方、刑事がうちに来て、次男の机の周りやパソコンを調べていた

刑事は、押入れの隅にバルーンタイムの空箱を見つけ、

「4月10日に自分のパソコンからAmazonで購入していますね」と言った


次男は4月7日に寝坊して仕事を休み、それ以降は出勤せずに、

自殺サイトを検索していたようだ


きっかけは、ただの“寝坊"だったんだ

そんな事で“もう後がない"と考えて、

3日後にヘリウムを買ったのか…



10日の何時にAmazonで注文したのかは聞いてないが、

この日は私とサトーココノカドーに出掛けている


「1週間だけココノカドーやるんだって、行ってみない?」

次男は「行こっかな」と返事をした


ファミレスでランチをしてから向かった

「うわ、外まで変えたんだね」

次男は驚いて笑った


もし出掛ける前にヘリウムを注文したのなら、

どんな気持ちで、私と一緒に歩いたのだろう


注文したのが、出掛けた後だとしたら、

何を考えながらクリックしたのだろう…


「顔を入れて」と言っても「え、やだよー」と入れてくれなかった


「安いから新しいジーンズ買おうかな」

次男は、みさえ・ザ・バーゲンで安かったEDWINのジーンズを試着してから、

レジに持っていった


「父の日のプレゼントに」と、私の彼氏に購入したネクタイは、6月に家に届いた

次男は、直接ネクタイを渡せず、

ジーンズは値札を付けたままで、1度も履いていなかった



刑事は、高校のノートや手帳の筆跡と、

「しばらく出かけてくる」という書き置きの筆跡を比べ、私に見せた


「この書き置きは、本人の筆跡に間違いありませんね

これらの状況から、事件に巻き込まれたとか、

教唆された訳ではなく、

自殺ということで調査を終わらせて頂きます」


私達は、刑事に深くお辞儀をして見送った