まだ少し待っててね

20歳の次男が2017年4月に自死しました

イケメン

子供の頃からずっと大好きなアイドルグループがいる長女は、

このアイドル事務所に、小学生だった次男の写真を送ろうとした事があった

「顔がかっこいいんだから入れるって」


長男が「俺じゃだめなの?」と言うと、

長女は「お前じゃだめだよ」と笑った

私は「だめだよ、芸能人なんて」と、写真を送る事を阻止した


長男は、よく「俺が、このスペックだったらなー」と

次男の容姿について言っていた


次女は、次男の顔がお気に入りだった

携帯電話で盗撮した写真ばかり集めた“弟フォルダ"を作っていた


幼稚園からピアノを習っていた次女は、

学校の合唱コンクールで、何度もピアノを弾いていた

いつも次男は隣でピアノを聴き「上手だなあ」と、誉めていた


小学生の時「僕も音楽をやりたい」と、

お年玉で初心者用のバイオリンを買ってきたが、

とても酷い音で笑ってしまった


次女は中学に入学すると、吹奏楽部に入部した

年子の次男は、姉を追いかけ吹部に入った


吹部は女の子が多く、同級の部員は次男以外、

全員女の子だった

それでも次男は、部員の女の子たちと仲よく、

沢山のプリクラや写真を撮っていた


中学校を卒業した後も、あちこち出掛けたり、ご飯に行ったり、

頻繁に集まっていたそうだ


リビングに入りきれないほどの吹部の女の子たちが、

お骨になった次男に会いに来てくれた

その時に「去年の夏から連絡が途絶えてしまって…」と聞いた

次男が携帯電話を壊してしまって、

前のLINEにログイン出来なくなったからだな…と思った


女の子たちは「居なくなるなんて、もう会えないなんて信じられない」

「優しかったし、中学の頃より身長もぐんと伸びて、かっこよかったよね」

などと思い出話をしたり悲しんでくれた

そして次男の為に、1通ずつ手紙を書いてきてくれた


一緒に来れなかった後輩の子がくれたLINEには、涙が出た


うちの中では末っ子だから、

面倒を見て貰うばかりだった次男が、

外では、きちんと先輩してたんだ…



長男は「俺が死んだって、こんなに沢山の女の子たち、

会いに来てくんねーよ、ハーレムじゃんか」と笑った


2年前に住んでいた家の時の家族LINEで、

次女と隣人の会話に、

長男が「きっと兄ですよって答えて」と返した事にも、

みんなで笑った



でも次男は、イケメンと呼ばれる事なんて、

どうでもいい様だった


幼稚園や小学生の頃は「〇〇ちゃんが好き」とか言っていたが、

高校生になると「俺は結婚しないと思う」なんて言いだし、

1度も彼女を作る事もないまま、逝ってしまった