遺書は無かった

次男は、同じ部屋だった長男にも、私にも全く気が付かせず、

黙って静かに、この世界から居なくなった

霊安室から、調書を取っている部屋に戻った長男は、

弟の携帯電話を開き、掲示板をチェックしていた

14時頃「今日は いけそうな気がする」

15時頃「今日旅に出る」「もう後がない」

20時30分頃「着いた……星が綺麗だな」

20時50分頃「また来世で」「おやすみ」

長男が「次男の書込みを見つけた」と言うと、

刑事は、その画面を写真に撮っていた

もう後がないって？

やっぱり大学に行こうかな？って言ってたの、つい最近でしょう？

こないだ、お兄ちゃんと2人で

じいじの家に行った時、

衣装ケースとキーボードの机を頂戴って言って、

貰ったばかりでしょう？

ひいおばあちゃんに、来月も遊びに来るねって約束したんでしょう？

夏には、お姉ちゃんと富士山に登ってご来光を見るんだって、

山小屋の予約を取ったんでしょう？

高校の担任だった先生とも、

今年の夏こそ、一緒に富士山に登るって約束してたでしょう？

こないだギターを買ってきて、教えてって言ってたでしょう？

花壇やプランターに植えたじゃが芋を収穫したら、

次は向日葵を植えるんだって言ってたでしょう？

秋葉原で買ったばかりの漫画だって

まだ読んでないんでしょう？

頭の中は、次男に言いたい事でいっぱいだった

女装させた次男子ちゃん

この時に長男子ちゃんも撮ってみた

次男は、向日葵が大好きな子だった

最近は季節じゃないからか、花屋に無いので、

仏壇には違うお花を活けている

蒸したものでも焼いたものでも、大好きだった、とうもろこし

「お線香の煙なんか美味しくないでしょ」

毎日、話しかけている