まだ少し待っててね

20歳の次男が2017年4月に自死しました

優しい子

Aとその両親の3人がマンションの下に着くと、私は言った

「まず、“Aが2丁目公園で遊んでいた事について、

裏を取っている"と言ってましたが、これは嘘ですね?

私はB君ママと仲が良いので、

いつも公園で遊んでいる子供達を教えて貰い、

全員に確認もしましたが、

“ずっとAは公園に来ていない"と言われました」


3人は黙っている


「それから名前と連絡先の筆跡を見て貰う為に、

コピーを持って、小学校へ行ってきました

先生は字を見てすぐに、“Aちゃんの字だね、間違いない"と言いましたよ?

あなた達、自転車屋で2人揃って“うちの子の字じゃない"って言ってましたよね?」


Aの父親は「Aは、いつも連絡帳やテストを見せないから、字がよくわからなくて」と言い訳を始めた


「は?字がわからない?

この間は“うちの子の字じゃない"って、はっきりと言ってたのに、

連絡帳もテストも見てなかったんですか?

じゃあノートの名前と連絡先も、

Aの字かどうか、わかりもしないのに否定したんですか?

自分達の嘘を棚に上げて、

うちの息子達に“この嘘つきが"とか “勝手に書かれて迷惑だ"なんて、

罵声を浴びせてたんですか?」私が聞くと、

Aの父親は、財布を開き

「ガラス代、半分払いますんで~」と、

今更、訳のわからない事を言ってきた

私は「結構です、いりません」と断った


「そして神社の集会所の子供会に参加していた全ての家にも、

聞き取りに行ってきました

Aと同じサッカーチームに息子を入れているという保護者の方から、

“神社でボールを蹴ったのはAで間違いない"と確認を取ってきました」

「うちの息子達に浴びせた罵声を取り消して、

今すぐに息子達に謝って下さい」

「あなた達は、自分の子の言う事が正しくて、

よその子は嘘つきだと決めつけてますが、

嘘ついてるのはAですよ?

Aは怒られるのが嫌だから、自分に都合のいい嘘をつくんです

あなた達の叱り方に問題があるんじゃないんですか?」

「“自分の子供くらい、ちゃんとしつけろよ

母子家庭の家は、これだからだめなんだ

人様の家に迷惑を掛けるな、この嘘つきのバカが"

そう言ってましたけど、そっくりそのままお返しします

両親が揃ってたって、子供の躾が全く出来ずに、

周りに迷惑を掛けてばかりじゃないですか

大体、嘘で子供を庇ったって、調べればこうやって、すぐにばれるのに…

親子で嘘つきなんて、どうしようもないですね」


私が言い終わると、Aの母親は「ぎぃぃぃー」と変な奇声をあげ、

「あんたなんか産まなきゃよかった」とAの髪を引っぱりながら、頬を何度も叩いた

「今すぐに死ね…死ね…死ね…」

言いながらAの首をしめていて、Aの父親がそれを止め、

私は呆気に取られていた


それまで黙って様子を見ていた当時の彼氏が突然キレた

「それ、子供に言ったらいけない言葉なんじゃねーの?」


Aの母親は「あーあー、私が悪いんでしょ

はー、謝りゃいいんでしょ、私が悪うございましたっ」

と不貞腐れ、土下座をした


「僕がゴールキーパーだったのに、

A君のボールをしっかり取らなかったのが悪かったんだ…

うちのままは優しいから絶対に許してくれるよ、だから頭をあげて

ねぇまま、許してあげて」

泣きそうな顔をした次男は、しゃがみこみ、

Aの母親の背中をトントンと叩いた


何言ってんの?次男くん…

この人達に“嘘つき"とか“バカ"とか、ひどい事を言われたんだよ?

どうして“ボールが取れなかった自分が悪かったんだから、

許してあげて"なんて言えるの?

やっぱり優しい子なんだな…そう思いながら、

「勘違いしないで下さい

謝ったって、私は絶対にあなた達を許しませんから」とAの両親に言い、

土下座をしている母親をそのままにして、

長男と次男の手を引き、自宅に戻った

結局Aとその両親は、息子達に謝らなかった



あれから12年7ヶ月以上経つが、私は今でもA親子を許していない

「あんたなんか産まなきゃよかった」

「今すぐに死ね」

あの母親は、自分の息子にそう言った

私は子供達に対して、そんな風に思った事も、言った事もない


あんなに優しい次男が、自ら逝ってしまったのに、

色々な人達を嫌な気分にさせ、問題を起こしてばかりいたA親子が、

酷い台詞を平気で口にするA母が、

今、どうしてるかは知らないが、

もし幸せに暮らしているとしたら…と思うと、

本当に理不尽で、腹立しくて仕方がない




幼稚園の発表会の動画を見ていたら、

次男は赤いクレヨンの役だった

小さな頃から、とても可愛い優しい男の子だった