まだ少し待っててね

20歳の次男が2017年4月に自死しました

4月28日

次男が好きそうな中華屋を近所に見つけた

一緒に行こうと思いながら、仕事から帰宅すると、

次男は留守だった

少し待ったが帰らないので、彼氏と2人で行くことにした



今年4月の始め、次男と買い出しに行った時、

じゃが芋の値段が高くて驚いた

去年の台風の影響だとニュースでやっていた


「こんな高いと肉じゃがも作れないね」と言うと、

「花壇で育ててあげるよ」

次男はホームセンターで、プランターと苗、栄養剤、土を購入してきた


花壇の雑草を全部抜いて綺麗にした後、

花壇とプランターに、じゃが芋を植えてくれた


次男は「この芋は、あまり大きくならないかもしれないな」と言っていた


4月28日、私は無性に気になっていた

仕事中も何故だかわからないが、いつ芋が収穫できるのか、

次男に早く聞きたくて聞きたくて堪らなかった


だから私は、中華屋で芋の話ばかりした


その日、私の彼氏は、職場の前に散乱していたハンガーなどを片付けた

昼食に出ると信号待ちの時に突然、烏に後頭部を襲われたという


どうやらハンガーなどのゴミは、巣作りの為の物だったらしい


「会社から出る度に、いきなり攻撃してくるから、

心臓に悪いし何より痛いんだ」と彼氏は言った


東電に電話をして、電柱から巣の撤去を頼むと、

「今は産まれた雛の為に巣作りをする時期で、

攻撃的だから撤去はまだ出来ない」と断られたそうだ


彼氏は烏の話ばかりしていた

「そうだ、レーザーポインターを買おう」


次男は秋葉原で、いつも変な物ばかり集めてくる

「次男くんが持ってるかもしれないよ」と彼氏に言った


中華屋からスーパーに寄り、次男の大好物の石焼芋を買い、帰宅すると、

なんとなく猫2匹の様子が変だった

こたつの横で2匹が固まっていて動かない


まず長女が、続いて次女が、最後に長男が仕事から帰宅した

みんな「なんか猫が変」と言う


もしかしたら猫達には、次男が見えていたのかもしれない




先住猫(キジトラ)は、次男が2歳になったばかりの時に貰った子猫で、子供達と一緒に育った

小学生の頃、次男は、よく猫玉を作っていた



いつもは、こんな感じで真正面の座椅子を取り、

猫様全開で寝てる事が多いのに、

あの時は何時間も、こたつの横で固まっていて変だった


あの場所は、次男がいつも入る場所だった

4月27日

3月から教習所に通っていた彼氏は、

その日が仮免の試験日だった


子供達の受験前日には、必ずカツを食べていた

26日、私の仕事が終わると、

次男と彼氏と3人で、豚カツを食べに行った


次男が「明日は頑張ってね」と

会計してくれた


帰りに寄ったスーパーで、

次男はプリングルスを19缶買った


私が「中ラベル19枚で、もれなくスピーカーが貰えるんだって」と言ったからだ


27日、仕事の昼休憩で帰宅していた私は、こたつで転寝をしていた


次男が「秋葉原に出掛けてくるね」と

話しかけてきたが、

私は寝ぼけて「うん」しか言わなかった


夜8時頃、次男が帰宅

「ただいま~仮免どうだった?」

「次男くんのカツのおかげで受かったよ」と彼氏が答えると、笑って親指を立てた


「秋葉原で何を買ってきたの?」と私が聞き、

「漫画を何冊か買っただけだよ」と答える次男


そして自分の部屋に戻っていった

私と彼氏が次男を見て会話をしたのは、それが最後だった





次男は子供の頃、そんなにカラオケが好きではなかった筈なのに、

2月頃に友達と1晩カラオケしてきた事がある


その話を長女にすると、長女は次男を誘い、カラオケの約束をしていた

結局、約束は叶わなかった



次男は右手指しゃぶり、

次女は左手指しゃぶり、

だから私の右手をつなぐのは次男、

左手をつなぐのは次女だった


大好きな豚ちゃんを抱えて指しゃぶり

この豚ちゃんは仏壇の上に置いている

8ヶ月間

次男は去年の8月に退職してから、

長男が勤める会社の違う支店で、バイトをしていた


バイトは月に16日しか出勤出来ない決まりで、

働きたい前日に連絡すればいい事になっている


比較的、自由のきくシフトなので、

今の次男には、ゆっくりできてちょうどいいかな?と思っていた


今年の4月8日頃、

「貯金がある程度貯まったから、1ヶ月ほどバイトを休もうかと思って…」と言ってきた


ちょうど私の彼氏が教習所に行き始めたばかりだったので、

「休みの間に車の免許、一緒に通ったら?」と答えた


今になるとその時に「免許は要らないよ~」と次男が拒んだのは、逝ってしまう事を考え始めたからだったのかな…と思ってしまう


次男は休みの間、たまに秋葉原などに出掛けていたが、

家にいる事も多かった


買い出しの手伝いに来て、荷物を持ってくれたり、

私の実家や特養に入っている母の様子を、一緒に見に行ったりした


私が運転する車の助手席で、

「やっぱりもう少しお金を貯めて

大学に進学しようかな」

「SEってどうなんだろう?」

「同じ作業を淡々とこなす仕事も嫌いじゃないから、工場勤務でもいいかなと思うんだけど」

色々と考えている話をしてきた


次男のバイトは、社員にもなれるが、

体力を使う仕事だから、年を取ると辛くなる


いつまでもバイトでは、だめだろうと悩んでいたのかもしれないし、

将来への不安があったのかもしれない


長女は、IT系の会社勤めをしている

ちょうどその頃に、取引先の会社の社長に

「SEが欲しいから弟くんを紹介してくれないか?

高卒でも仕事してくれれば構わないからね」と言われたそうだ

長女は、弟の仕事や将来を心配して

「話だけでも聞いてきなよ」と言った


次男は学歴を気にしていた

そして自分に出来るかどうか…

もし出来なかったら、姉に迷惑を掛ける事になるかも…と考えていたのか、その話を断った




「お茶の水で、ギターを買ってきたから教えて~」

と頼む次男

私の彼氏はバンドでギターを弾いていた



長女のエレキを借りてきて、

彼氏が次男にコードを教える




次男は、よくボルダリングに行っていた

長女が撮った動画を私が切り取った



この何日か後に、いきなり居なくなるなんて、思いもしなかった